詩とお話でひとやすみ
時折聞こえてくる声。これでも「励まし」って言うんでしょうか?
どっちかって言うと、前向きなんです。
辛い時もありますよね。
腹が立つ時もあります。
「人達」のお話。
ある区切り目にきたようです。
応援したりもするんです。
ある日の出来事。
応援したりもするんです。
応援したりもするんです。
こんな気持ち。
おねえちゃんと7人の子供達
お客様
その日、妖精達は朝から大忙しでした。何かを持っては一つの部屋から他へ移したり、何だか行ったり来たり騒がしいので、私が呼び止めて聞くと、
「お客様。」
とだけ言って、また作業に戻っていきます。また呼び止めて客は誰なのか聞こうとしても、
「忙しい。」
とか
「今はダメ。」
と言うだけで、またいそいそと荷物を運んだり積んだり...
「お客様なら、私も準備しないといけないじゃん。」
と言っても、
「後で。」
と言って、かまってくれません。私は諦めて、放っておくことにしました。まぁ、どうせ大した客ではないでしょうし...で、テレビを見ていると、今度はおねえちゃんが私の目の前に来て言いました。
「バケツ貸して。」
「バケツ?なんで?」
まぁ、答えは分かっていたんですが...
「お客様。」
相変わらず同じ答えです。バケツで客になにをするのか...気になりましたが、どうせ答えは同じだろうと思い、
「いいよ。」
そう言って、私は洗面所からバケツを持ってきました。
「はい。」
私が差し出したバケツを見ると、おねえちゃんは私の顔を見て一言...
「可愛くないね。」
明らかに不満そうです。バケツに何を求めているんだ?と思いながらも、私は反論しました。
「そう?可愛いと思うけどな〜。綺麗な青で...」
もうおねえちゃんの中では結論が出ている様で、私の話を遮るように大きく首を横に振りながら繰り返しました。
「可愛くないね。」
個人的にはこのシンプルなデザインが好きなのですが...そう思いながらバケツを見ていると、ふとおねえちゃんが私に財布(私の財布)を差し出しているのに気が付きました。
(...買って来いってのか...)
まぁ、家にいても誰も構ってくれそうにありませんし、バケツくらいなら良いかと思い、財布を受け取りました。
「可愛いのね。」
念を押すようにおねえちゃんが言いました。
「どんな可愛いの?」
「お姫様用の。」
そんな事を言われても困ります。
「お姫様はバケツ使わないよ。」
するとおねえちゃんは焦れったそうに言いました。
「使うよ!可愛いお姫様用のバケツ!」
珍しく苛立っています。どうも来客準備でピリピリするのは人間だけではないようです。
私はおとなしくバケツを買いに行く事にしました。買い物の途中、手芸屋に寄って、キラキラ光る石をいくつも買い、それを買ったピンクのバケツに付けました。おねえちゃんの機嫌をとろうと思いまして...
で、持って帰ってバケツを見せると...
「可愛いバケツ。」
おねえちゃんは満足そうに一言言って大きく頷きました。そして嬉しそうに私の顔を見ると、
「ありがと!」
と言いながらバケツを持って走っていきました。

その後も当分バタバタと動き回っていた妖精達が急に静かになったのは、日が殆ど沈んだ頃でした。
落ち着いた様なので、そろそろ客が誰なのか教えてくれるだろうと思い、訊きに行こうと立ち上がった時、奥の部屋から大きな声が聞こえてきました。
「いらっしゃいませ〜!」
妖精達の合唱に混じって、「キューピーちゃん!」と言う声も聞こえました。まぁ、本人(キューピーちゃん)は一緒に「いらっしゃいませ」と言っているつもりなんでしょけど...
どうも客が来たようです。明らかに玄関からではありませんでしたけど...まぁ、それも珍しいことではありませんし、お客はお客ですので、挨拶でもしようと思い、私は声のする方に向かいました。

廊下を歩いていくと、話し声が聞こえてきました。
「なかなか良い所だな。気に入ったぞ。」
女性の声です。
(...誰だろう?)
どうも褒められて嬉しいらしく、妖精達の歓声と拍手が聞こえてきました。
「ここならゆっくり出来そうだな。」
また嬉しそうな拍手と歓声が聞こえました。
(え〜、ゆっくりすんの?)
そんな私の考えとは裏腹に、妖精達は、歓迎会を続けています。
「ご飯があります。」
おねえちゃんの声です。
(...ご飯の準備、したっけ?)
そう思っていると、いきなりドアが開いて、妖精達がバタバタと部屋から出てきました。そして、驚いて立っている私になど気付かない様で、そのまま台所の方へ走って行きました。
一人廊下に残された私は、ふと開いたままのドアに気付き、中を覗いて見ることにしました。挨拶は早めに済ませた方が良いと思いまして...
で、ドアを軽く叩きながら部屋の中を見ると...部屋いっぱいに広げられた布団やクッションの真ん中にあのピンクのバケツが置いてあるだけで、どう見ても客がいるようには見えません。
(...おかしいな...みんなと一緒に出ては行かなかったと思うんだけどな...)
そう思いながら、部屋に入った私は、恐る恐る声を掛けてみる事にしました。
「あの〜...どなたかいらっしゃいますか?」
すると、どこからともなく、
「誰じゃ?」
さっき聞いたのと同じ女性の声です。
私は部屋を見回しましたが、やはり誰もいません。まぁ、とにかく、返答をすることにしました。
「私はここに住んでいるもので...」
すると、またどこからともなく、
「どっちを向いて話しておる?頭が高いぞ。」
という声です。
(「どっち」って言われても...)
そんな事を考えながら部屋を見渡しましたが、やっぱり他には誰も見当たりません。困った私はまた訊いて見ました。
「どちらにいらっしゃいますか?」
すると...
「ここじゃ。」
当たり前の様に答える声。その声はどうも私の足元の方から聞こえてきました。しかし、足元には、あのピンクのバケツがあるだけ...
(まさか、バケツの中じゃないよな...)
そんな事を考えながら、私はバケツを手に取り、中を覗き込んでみました。すると...
「わぁ!!!!!」
大きな声と同時に水の中から何かが跳ねたではありませんか!
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!!!」
私はみっともない悲鳴を上げてバケツを落としてしまいました。
すると、今度はゲラゲラと楽しそうな笑い声と共に、ピンクの何かがモゾモゾと転がったバケツから出てくるではありませんか!私はその状況にどう対処して良いのか分からず、その場に立ち尽くしてしまいました。
そこへ、今度は、騒ぎを聞きつけた妖精達がドタドタと入ってきたから大変です。「勝手に入っちゃダメじゃん」とか「あ〜、落とした」とか「挨拶はしたの?」とか、口々に言いながら、ガタガタとバケツを拾い上げたり、ガチャガチャと持ってきたお皿をその辺に置いたり...私は私で、弁解しようと、事情を説明し始めましたが、あまりにもガヤガヤしていて、みんなが聞いているのかどうか、さっぱり分かりません。
すると...
「静まれ!」
大きな声が聞こえてきました。それは、とても威厳のある声で、思わず私も妖精達も一斉に動きを止め、黙ってしまいました。
すると、また同じ女性の声で、
「その者は悪うない。許してやれ。」
というありがたいお言葉。どうもその声の主は、あのピンクの物体の様です。だって、その言葉を聞いた全員が、いきなりピンクの物体を囲んで平伏して、
「はは〜。」
って言ってるんですから。
私は、その様子を見ながら、
(時代劇じゃあるまいに...)
と思いましたが、まぁ、許してもらえるみたいなので、突っ込みは入れないことにしました。

で、まぁ、許してもらって、紹介されて分かったんですけど、どうもそのピンクの物体は「ナマコ姫」だそうです。ナマコが何でピンクなのか、なんで妖精はナマコの言うことを聞いているのか、ナマコに姫がいるのか...色々と疑問があることはありましたが、細かいことを考えるのは止めることにしたんで、追求はしませんでした。それに、言われて良く見てみると、確かにそのピンクの物体の上に小さなティアラが乗っていましたし。だからって「姫」って証明にはなりませんけど...
まぁ、別に疑う理由もありませんし、異議を唱える必要もないんで、私は素直に状況を受け入れて挨拶をし、楽しみにのけておいたケーキを差し出す羽目になって、丸く収まりました。

結構の場合、妖精のすることには何か隠れた意味があったりするんですが、今回ばかりはさっぱり分かりません。まぁ、ティアラを頭に乗せたピンクのナマコが偉そうに妖精達に命令する度に笑えてくるんで、それだけで良いのかも知れませんけど...

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