詩とお話でひとやすみ
時折聞こえてくる声。これでも「励まし」って言うんでしょうか?
どっちかって言うと、前向きなんです。
辛い時もありますよね。
腹が立つ時もあります。
「人達」のお話。
ある区切り目にきたようです。
応援したりもするんです。
ある日の出来事。
応援したりもするんです。
応援したりもするんです。
こんな気持ち。
おねえちゃんと7人の子供達
猫とおねえちゃんと私
その日も相変わらず、普通の朝でした。
まぁ、妖精達との共同生活を「普通」と呼んで良いのかどうかは難しいところですけど...

慣れというのは恐ろしいもので、今では、巨体のじんべえと小さな小さなたまちゃんが一緒に「妖精真似しっこ大会」(なんか、他の妖精の真似をするんだそうです)に行く為に、お揃いの巨大なリュックと小さいリュックを作らされようが、キューピーちゃんが寝ぼけて大きな前ポケットから、「キューピーちゃん!」と言って登場する度に、ぼくが横から飛び出して、「ぼくちゃん!」と叫ぼうが、飛び回るカイルの背中にケインが跳び付く成功数をかなえが数えていようが、一向に気にならなくなりました。

で、おねえちゃんはというと、どこから連れて来たのか、猫にまたがり、家中を走り回っています。

大して広くもない家を嬉しそうに走り回っている猫とおねえちゃん...嬉しそうにキャッキャと笑う声が、あまりにも楽しそうで、走るのを止めるように言い出せなかった私が悪かったのかもしれません...

(まぁ、何も壊してないし...)

などと考えていた矢先のことでした。廊下に一歩出た私は、急激に近付いてくる「キャッキャ」に顔を上げた瞬間...

ド〜ン!

飛び付いて来たおねえちゃんと猫に正面衝突してしまいました。
それは、痛かったような、痛くなかったような...ショックだったのか、衝撃だったのか、あまりにも急な出来事に、脳が追いつけなかった様です。ただ、慌てて、

「おねえちゃん! 大丈夫?!?」

と言いながら起き上がるのが精一杯でした。

「おねえちゃん! 大丈夫?!?」

何度も言う私に、おねえちゃんの声が聞こえてきました。

「あ〜、びっくりした。」

どうも大丈夫そうです。そして、今度は、猫の事を心配する私に、

「大丈夫。」

と猫の声。どうも猫も大丈夫の様です。

(...へ?猫?)

私の思考回路は、急停止をしました。

(何で猫の声が聞こえんだ?何で猫が大丈夫って言ったんだ?何で猫の声だと思ったんだ???)

脳は混線状態です。訳も分からず、その先が考えられなくなっていた私に、おねえちゃんが教えてくれました。

「だって、にゃんこも一緒じゃん。」

当たり前の様です。

(いやいや、猫が一緒にいても、何言ってるか分かるわけないじゃん。)

そう思っていると、またおねえちゃんが、

「にゃんことお話出来るよ。」

と答えます。

(そりゃあ、おねえちゃんは、誰とでも話せるだろうけど...)

そこまで考えて、私の思考は、また凍りつきました。だって、私が頭の中で考えている事に、いちいちおねえちゃんが返答しているんですもの。

「おねえちゃん?」

訳も分からず、私はそう呼んでみました。すると。

「は〜い!」

元気な返事です。その声は頭の上の方?...それとも...後ろ? 見回しても、おねえちゃんの姿が見当たりません。

「おねえちゃん?」

また声を掛けると、

「は〜い!」

相変わらず元気な声はしますが、姿が見えません。おまけに、声のする場所ってのが何だか変です。上の様な、後ろの様な...でも、異常に近くて...まるで...

「頭ん中!」

おねえちゃんが私の考えをまとめてくれました。

「!!!!!」

それからどれだけ経ったでしょうか。気絶はしていなかったと思うんですが、あまりのショックに、全てが止まってしまった様でした。で、まぁ、落ち着いて考えると、ようは、おねえちゃんと猫とぶつかったせいで、合体しちゃったってことらしいんです。

(普通なら、頭おかしくなるぞ...妖精で変なことに慣れてて良かった...)

と思っていると、

「変な事じゃないよ。」

とおねえちゃんが反論してきました。

そして、その声にはっとし、

(そうか、全部聞こえるのか...)

と困っている私の事などお構いなしに、おねえちゃんの声が続けました。

「ねぇ、ご飯食べよう。」

(なるほど...確かにお腹は空いた。でも、一人分食べれば良いのかな?三人分食べて、私だけが太るってのは困るな...妖精と猫と合体してても、やっぱり太るかな?...)

そんな事をブツブツと考えている私とは裏腹に、別の声が頭の中で響きます。

「ご飯食べよう。」
「魚が食べたい。」
「ご飯食べたら、昼寝しよう。」

最後のは、おねえちゃんと猫。同意見の様です。

(魚は昨日食べたから、今日は、バランスとって別の物に...)

と考えている私に、

「魚が食べたい。」

遠慮なく繰り返す猫の声。

(まぁ、魚は体に良いんだから、良いか...)

と理由を述べる私をよそに、

「魚食べたい。」
「ご飯食べよう。」
「食べたら昼寝。」

理由も何も関係ない声が響きます。

という事で、魚を食べる事になり、冷凍してあった魚を解凍しながら、付け合せの野菜を切っていると、また二人組の声。

「眠くなってきた。先に昼寝しよう。」
「昼寝してから、ご飯。」

勝手に予定を変更しています。

(ダメよ。作りかけなんだから。野菜切りかけだし、魚もこのまま出しっ放しじゃあ...)

「寝よう。」
「眠いから、寝る。」

理由を聞く気もない様です。そして、残念なことに、二対一では勝ち目がない様で、私にも、急に眠気が襲ってきました。頭の中には、

「寝よう。」

それしか聞こえません。
結局、辛うじて魚と野菜を冷蔵庫に入れると、私は、おとなしく眠気に従って昼寝をしました。

っと、まぁ、始終こんな感じで、それから三日間、私は、常識とか理由とか順番とかを完全に無視して生きる子供と猫に振り回される生活を続けました。
今朝も食べたじゃあないか...と言うのに、また食べたがる魚。スケジュールを無視して訪れる昼寝の時間。こんな年して恥ずかしいってのに、つい買わされたイチゴパンツ。時間を忘れて見入ってしまった、庭の小鳥達...いちいち述べる私の反対理由は、ことごとく、

「なんで?」
「いいじゃん。」

に押し切られていきました。

そして、いちいち理由を述べたりきまりごとを気にする私の声など気にする風もなく、呑気に「なんで?」「いいじゃん」と言っては、気ままに生きる子供と猫との生活に、少しずつ慣れ、むしろ心地よい開放感を楽しんでいる自分に気付き始めた三日目のことです...

「あっ、たまちゃんとじんべえちゃんだ〜!」

おねえちゃんが嬉しそうな声を上げました。どうも、出掛けていたたまちゃんとじんべいが帰って来た様です。

「おかえり〜!」

私は、たまちゃんとじんべいに手を振りました。そして、嬉しそうに手を振り返す二人を見ていると、

「にゃんこ、行こう!」

と言うおねえちゃんの声と同時に、今度は急に、おねえちゃんが私の体から飛び出して来るではありませんか。入って来た時の様に猫に乗って...そして、そのまま手を振っているたまちゃんとじんべいの方に走って行きました。

残されたのは、走っていく猫とおねえちゃんの後姿を間抜け面で見つめ佇む私。

(出て行った...)

とやっと状況を理解出来た頃には、三人と一匹が目の前に立っていました。
で、まぁ、とりあえずたまちゃんとじんべいを迎え入れた後で、私は何よりも気になっていた質問をおねえちゃんにしました。

「おねえちゃん、どうやって出たの?」

不思議そうに訊く私の顔を見て、おねえちゃんは当たり前の様に、

「「えい!」って出たの。」

飛び立つ様に両腕を伸ばしています。

(「えい!」って...それだけ?)

そう思いながら、

「「えい!」ってやったら、いつでも出て来れたの?」

と訊くと、おねえちゃんは、また当たり前の様に、

「うん。」

それを聞いて、目が点になってしまいました。この3日間の苦労...飽きるほど食べた魚...何枚ものイチゴパンツ...そんな事を考えながら、私はおねえちゃんを見て訊きました。

「なんで今まで出て来なかったの?」

すると、おねえちゃんは急に悲しそうな顔になり...

「嫌だったの?」

不安そうな目で私を見つめています。それで、私は慌てて、

「そんな事ないよ!とっても楽しかったよ。」

と答えると、おねえちゃんは、嬉しそうに微笑んで、

「また遊ぼうね。」

そう言って、猫と一緒に走って行きました。
どうも、遊んでいただけの様です。
走って行くおねえちゃんと猫の後姿を見ながら、私は一人呟きました。

「ぶつからないようにしよう...」

その後、それまでの生活に戻った私は、順序とかきまりとか理由とかを考えながら生きる日々を再開しました。
だって、大人なんですもの...

とは言うものの、実は、あの呑気に自由な生活が時々恋しくて、たまに

(だって、きちんとしないといけないじゃん。)
という大人の私に、
(なんで?)
と自分で聞き返しては、
(いいじゃん)
と押し切って、昼寝をしたりしています。

だって...いいじゃん。ねぇ。

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