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死神は、実は沢山いるんです。なんか、担当とか管轄とかあるらしくて...むこうの世界も色々と大変なんだそうです。見習いとか階級とかもあって...色んな性格の死神がいるそうですし。
で、これは、私担当の死神さんに逢った時のことです。
彼は、見習いだと言いました。まぁ、私にとっては、立派な死神ですけど。
とても澄んだ薄い青色の眼をしていました。透き通ったその瞳の奥には、深い悲しみがあったような気がします。
その瞳の奥を思い出すと、目の前に静かな湖が広がります。それは、私が何度も見た事のある湖。森の中にあるその青い湖は、とても静かで悲しい雰囲気を漂わせています。いくつもの魂の悲しみを見てきたような、そして、飲み込んできたような、深く冷たい湖です。
彼は、優しく私に笑いかけてくれました。
その笑顔を見た時、私も思い出したんです。会ったのは、これが初めてじゃない...って。
以前、子供の頃に死んだ私が、自分の死を理解出来ずにその場へ留まると言い張った時、彼は辛抱強く私の横で待っていてくれました。沢山の敵を殺し、戦場で倒れた戦士の私を迎えに来た時は、「後片付けが大変なんだから...」と困ったように溜息をついていました。
何度も、何度も...彼はいつも私を迎えに来てくれていたように思います。私を亡くして悲しむ人達を心配そうに見る私の肩を慰めるように抱いて、連れて行ってくれた彼は、いつも見送る人達の悲しみを一身に受け、逝く私の心を癒してくれていたと思います。
そして、私が生きている間も、こうやって時々様子を見に来てくれていたようです。仕事の途中で見かけた私を気に掛けたり、寄り道をして見に来てくれた事も...休みに日には、こうやって傍にいてくれていました。励ましたり、話をしてくれたり… 姿を見る事も、声を聞く力もない私の横で、いつも優しく声を掛けてくれていたのです。
そんな彼が石を差し出しました。それは、天青石という名前のクリスタルだと思います。薄い青の綺麗な石で、彼の眼の色に似ていると思いました。
今回は、こうやって見ることも、話しをすることも出来るから、今まで彼が私にしてくれていたように、私も彼の心を少しでも癒してあげられたら良いなって思います。でも、それは、こんなちっぽけな人間の傲慢な考えなのでしょうか?
余談ですが、昔、一番上の死神に会ったことがあるような気がします。あの時の記憶が正しいのなら、お頭は、ノリが軽く、明るく、そしてとても深い優しさを持った、素敵な神でした。
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