その鉢はどこか
遠い所で
ある坊さんが
呪いをかけた
辛くもちっとも
悲しくも無い
ただ遠慮深い
古びた遠慮鉢
その鉢を持って
外を出歩くと
人々が助けの
手を差し伸べるが
なぜか遠慮して
断ってしまう
とても厄介な
困った遠慮鉢
どうも昔は
普通の鉢で
色んな人が
使っていたが
ある日とても
無遠慮な人を
懲らしめる為に
使われてしまった
今でもその鉢を
手にしていると
色んな物を
人々が差し出すが
やはり遠慮して
断ってしまい
ずっと空のままの
寂しい遠慮鉢
いつかもともと
遠慮深い人が
その鉢を知らずに
手にして使ったら
その時初めて
呪いが解けて
普通に戻るという
奇妙な遠慮鉢
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