何を塗っても思う様な
仕上げが出来ないとある日気が付いた
重なり混ざった古い色たちは
それぞれ勝手な主張を掲げ
新しく塗られた色の輝きを
奪い歪みへと変えていった
行き詰った私は何かを変えようと
考えたが元の色も思い出せない
全てがあまりにも醜く見えてきて
一からやり直すことしか考えられず
色を落とす準備を整え始めた
塗った色をそっと剥がしていると
塗った日の理由が少しずつ甦ってきた
何かに追われて 誰かから隠れて
変わりたいと願い 重ね続けた色
あれはあれで 必死だったのだと
塗った自分が少しだけ可愛く思えてきた
塗った色を どんどん剥がしていくと
忘れていた日々を思い出してきた
もう進めないと言って蹲った夜や
分からないと言って泣いた日々が
生んだ微妙なその色合いは
私にだけ分かる色なのだと気付いた
横に集めた 剥がした色を
じっと見つめて私は溜息をついた
どれも美しくはないかも知れないけれど
全て私の塗った色なのだと
一番最初の色がなんであれ
この色全てが今の私なのだと
気付いた私は また筆を握り
剥がした色を元に戻していった
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