詩とお話でひとやすみ
時折聞こえてくる声。これでも「励まし」って言うんでしょうか?
どっちかって言うと、前向きなんです。
辛い時もありますよね。
腹が立つ時もあります。
「人達」のお話。
ある区切り目にきたようです。
応援したりもするんです。
ある日の出来事。
応援したりもするんです。
応援したりもするんです。
こんな気持ち。
ある日の出来事。
ある日の誓い
森の入り口を横切る道の横にその人は座っていました。
石の上に腰掛け、両肘をひざに乗せ、力なく頭をうなだれていました。
太陽がポカポカと青空から優しく暖め、涼しい風が囁くように柔らかく頬を撫でる中、その人の周りだけが灰色に曇って、今にも雨が降りそうな空気でした。
旅をしていた私は、ふと心配になり、声を掛けました。

「大丈夫ですか?」

もし空腹なら、私の持っている饅頭を分けてあげる覚悟でした。
その人はゆっくりと顔を上げました。涙に濡れた顔は、周りの空気と同じ灰色でした。

「わたしのせいじゃないのに。」

その人は悲しそうに言いました。
私は一層心配になって、聞きました。

「何かあったのですか?」

するとその人は、また俯いてしまいました。

「もし良かったら、話してください。」

なぜか力になりたいと思いました。
するとその人は顔を上げて、不安そうに私に尋ねました。

「私の事、嫌いじゃありませんか?」

そう聞かれて、私は困ってしまいました。そんないきなり「嫌いか」と聞かれても...
すると、その人は悲しそうに言いました。

「みんな私が嫌いなんです。良い事があっても知らんぷりで、悪い事があると、私ばかりを責めて嫌うんです。呪う人だっているんですよ!」

理不尽な仕打ちだと言った風に、その人は声を荒げました。
確かにそれは酷い話です。私も一緒に憤慨して言いました。

「それは酷いですね!」

するとその人は、私を嬉しそうに見て続けました。

「そうなんですよ!そりゃあ、嫌な事もしたりしますけど、それも全部、ずっと前からの約束じゃありませんか!」

そう聞いて私は考えました。

(...借金の取り立て屋かな?)

私の様子など気にせず、話が続きました。

「良い事だってするし、変わったりもするじゃありませんか!」

その人は、どんどん興奮していきました。

「大体、私も大変なんですよ!色んな奴らに操られて...どうすりゃ良いって言うんですか?!? 嫌ならあいつらと交渉してくださいよ!自分でどうにかすれば良いじゃありませんか!私だって変わるんですから!」

話を聞きながら、私は思いました。

(...きっと、下っ端の借金取りだな。)

そんな私の考えなど気付かぬ様子で続けるその人は、興奮のあまり立ち上がって叫び始めました。

「嫌なら自分でどうにかすれば良いんですよ!出来る事、たくさんあるじゃありませんか!どうにかなる事が大半なんですから!いちいち私を憎むのはやめて下さいよ!」

悔しいと言った感じで怒鳴っていました。
私はどう対応して良いのか分からず、ふとポケットから饅頭を出して、その人に差し出しながら言いました。

「大変ですねぇ...」

そこから続ける言葉が思い当たりませんでしたけど...
すると、その人は、饅頭は受け取らずに私の顔を見ると、今度はいきなり悲しそうに座り込みました。そして、俯きながら、残念そうに言いました。

「そりゃあ、どうする事も出来ない時だってありますから...可哀相ですけど...それも約束なんですよ、昔からの...どうしようもないんですよ...私にだって...」

悲しそうに言いました。そして、私が差し出している饅頭を見つめると、思い出した様に私の顔を見ました。

「あなたは、どこへ向かってるんですか?」

意外な質問でしたが、私は正直に答えました。

「実は、分からないんですよ...道に迷ってまして...」

するとその人は、それまでは見せなかった優しい笑顔で言いました。

「心配しなくても大丈夫ですよ。行き先はあなたに見逃されたりしませんから。そこまでは、気楽に好きな事をしたら良いんですよ。」

先ほどとは打って変わって、なんとも穏やかな空気を漂わせて、私を見つめていました。

「そうなんですかねぇ...」

私はなんと答えて良いのか分からず、そう言いました。
するとその人は、相変わらず穏やかに続けました。

「そうですよ。どうせ行き着く先は同じなんですから、それまで楽しみましょうよ。」

なんだか意味ありげな言い方が気になりましたが、なんとなく筋は通ってます。私は頷きました。

「そうですね。そうします。」

軽く答えた私に、その人は真剣な眼差しになって言いました。

「約束ですよ。好きな事を楽しんでくださいよ。」

なにをいきなりマジになっているのかと困惑しましたが、私は頷きました。

「はい。好きな事を楽しみます。」

しかし、その人はまだ納得いかない様で、私を見つめて繰り返しました。

「約束ですよ。本当に、好きな事をしてくださいよ。」

なんだかその真剣さが可笑しくて、私は微笑んでその人を見つめ返しました。

「はい、誓います。」

そう言って、手に持っていた饅頭を半分に割ると、その片方をその人に差し出しました。

「これ、誓いのしるしです。ね、好きな事しますから。」

なんだか分からないけど、好きな事をするんなら良いだろう...みたいな軽い気持ちでした。
すると、その人は半分の饅頭を嬉しそうに受け取って言いました。

「誓いですね!」

そして、晴れ晴れとした明るい顔で、ニコニコしながら饅頭を食べ始めました。
その姿を見て、私もやっと安心して、残りの半分の饅頭を食べ始めました。なんとも浮き沈みの激しい人だなぁ...と心で思いながら。
そして、饅頭を食べ終わると、その人は私を見つめて嬉しそうに言いました。

「じゃ、誓いましたよ!」

そうしてその人は明るい顔で立ち上がると、一人で道を歩き始めました。スキップにも似た、軽い足取りで。
私は慌てて立ち去るその人に声を掛けました。

「あの〜、お名前伺ってませんでしたよね〜。」

すると、その人は振り返って嬉しそうに言いました。その日の空にも似た明るい笑顔で元気に...

「運命です!」

そう言うとその人は、嬉しそうに大きく私に手を振ると、駆けて行きました。

私はその時初めて、何が起こったのかを理解しました。どうも私は運命に誓ってしまったようです。「好きな事をする」と...饅頭半分を食べながら...

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